聖岳・光岳
2006年8月18日~8月22日

14年ぶりの聖岳、初めての光岳。”マッチャン岳、マッチャン岳”と、喧しい事・・・・・・・!

”きついとは聞いていましたが、便ケ島からの登りはしびれました。”とは、
14年前に同じルートを登った時の感想。
今回は、易老渡から光岳へ登る予定が、シマヤン情報により、
当日光小屋団体様47名なり・・・・を聞いて、急遽聖平小屋へ変更。

前回より若干荷は軽く、また、木も陽射しをさえぎる程茂り、
条件は良かったのだが、やっぱりシンドカッタ・・・。

同行のショウタン・シマヤンは熟年パワーを発揮して、
僕より重い荷物を担いで、スタコラ先へ登ってゆく。

”ああ、とんでもない人達ととんでもない所へ来てしまった。足手まといに既になっている・・・・・。”

暗い気持を引きずりながら、ひたすら薊畑が待ち遠しい松でした。

行程
8/18 聖光小屋
16:10
8/19 聖光小屋 聖平小屋
5:15 11:25
8/20 聖平小屋 聖頂上 聖平小屋 上河内岳 茶臼小屋
5:00 7:05 8:45 12:40 14:25
8/21 茶臼小屋 茶臼岳 仁田岳 易老岳 光岳
5:35 6:10 7:14 9:15 13:33
8/22 光小屋 易老岳 易老渡
5:17 7:12 10:20

ショウタンの記録へリンク

8月18日

  14年前には無かった聖光小屋で、明日への熱い想いを胸に鼾をかく前の素敵な熟年オジサン達です。隣の部屋には、大虎一団が・・。これから同じコースを辿ることになる、青森の同級生+αの方々でした。
8月19日

  まだ暗い中、意気揚々と出発です。僕は既に、これからの登りを思い出して、うんざりしています。ひたすらしんどかった薊畑への登りを、まさか2度も登る事になろうとは・・・。でも、光小屋で縦になって寝るのは”絶対にイヤ”だし・・・・・、と自分を励ましつつひたすら登ります。


  ”前回はこの辺で、ヒルに血を吸われ、首を真っ赤に染めたおじさんがふうふう言っていたよな・・・・”と、前を行くショウタンの太い足を見ると、居るじゃありませんか、ヒル!!”ショウタン、ヒル!””キャー!!、シマヤン取って・・・”と言ったとか言わないとか・・。それにしてもあんなに小さなヒルが見える僕の目も大したものです、ハイ。




  前回同様、なかなか薊畑につきません。”薊畑に着いたら、高度計を合わせよう”と、はるか先を行く御二人の声。でも、これまた前回同様、いきなり快晴の薊畑分岐へ飛び出します。”あれ~?薊畑はどこ??”


  ”これから聖岳へピストンする”という、大虎一団の声を聞きつけ、ショウタン・シマヤン、なにやらひそひそ・・・。”今日は、聖平小屋でゆっくりしましょう。ビールは飲まないけど!”と、声を大にして主張する、すでに足ガクガクの哀れな松でした。そこはさすがに年の功、”そうだな、今日は予定通りゆっくりするか・・”との声に、思わず嬉し涙がちょちょ切れました。”だから、オジサンって好き!!”




  御二人とも、余裕綽々デス。シマヤン、片時もビールが放せません。ショウタン、蒸れるの??聖平小屋は、14年前と変わらず、前回宿泊した、懐かしの素泊まり小屋もまだ現役でした。
8月20日

  快晴の朝を迎え、憂鬱な一日が始まります。目の前にくっきりと聳え立つ聖への登りを思いながら、”前回聖登ったし、小屋で待っていようかな・・・・”などと、安直な事を考えていたら、シマヤンの鋭い一言、”何を言いよんな、さあ行くぞ!”ああ、僕のくつろぎの小屋ライフが消え去ってしまった・・・。


  ハイパーおじさん、聖の登りもなんのその、空荷ですいすい泳ぐように駆け上がります。”これで二度目、これで二度目”と、○中の患者のようにブツブツつぶやきながらやっとの思いで聖の頂上に着くと、”遅かったね~!!さあ、下ろう!””ひえ~!!僕はたった今着いたばかりなんです。ちょっと3013mの風を楽しませてください。”


  今日は、行く先の光岳まで見えます。快晴の稜線を心行くまで楽しみます。ショウタン・シマヤンは、もう見えません。信号ダッシュのごとく、先を争って駆け下りてゆきました。それを見ていた年配の女性、かなり離れて歩いていた僕を、彼らの同行者だとわかるはずもありません、”ねえ、危ないわねえ。怪我でもしたらどうするのかしら・・””きっと、彼らなら、空でも飛べますよ!”そう返答した僕を、おばさんは怪訝な目で見つめ返してきました。思うのは勝手ですが、人の楽しみを否定してはいけません。どこに敵がいるかわかりませんよ。


夏雲湧き立つ縦走路へ、いざ出発です。

  今年もチングルマに出会えました。この時期にしては、かなり高山植物が残っており、今年の雪が多かった事を想像しました。このチングルマ、とても親近感を覚えます。




  上河内岳の肩です。ここから見上げる上河内岳への登りは、とても急に見えますが、適度な勾配に切ってあり、とても登り易い道でした。


  亀甲状土を進みます。ハイマツの実を目当てのホシガラスがいたるところに居ます。彼らがこんなに群れているのを見るのは初めてです。


  茶臼小屋への分岐手前にある、”ハイジの丘”から臨む、明日登る事になる茶臼岳です。ハイジの丘には、歳を召されたペーターが御二人でくつろいでおられました。茶臼小屋への下りは、思ったほど稜線から逸れず、これなら我慢できるカナと・・。ただし、その分水が少なく、翌日の水汲みに手間取りました。ショウタン・シマヤンは、大虎グループと酒盛りです。酒の飲めない僕は、一人で寂しく部屋で音楽を聴いていました。後ですれ違いざまに、大虎の女性が一言、”付き合い悪いんだから・・。””すみません、僕はお酒飲めない身体なんで・・・・。”そのような身体も、実際には存在するのでしょうが、僕は全く呑めないわけではありません。ただ、大虎が怖かった。


8月21日

  ダイナミックな日の出を、茶臼小屋のデッキから楽しむことができました。繊細なショウタン、昨晩隣に大虎の女性が寝たものだから、ほとんど眠れなかった模様。”マッチャン、場所替わって””腰痛いだろう?揉んでやるから・・。”いいえ、この場所は譲りません。だって、隣にアサインされた方がおられず、二人分のスペースを確保できるんですから。でも、さすがに翌朝のショウタンの疲弊した顔を見ると、”やっぱり交代しておくべきだった”と反省することしきりでした・・。でもね、本当は、あの場所はシマヤンが寝るはずだった場所ですよネ、シマヤン!。


  茶臼の頂上で、”はい、ポーズ!!”。このあたりまでは、視界も良く、稜線漫歩を満喫できました。朝の涼しい時間帯は視界が良く、太陽が上がるにつれガスが濃くなり、暑い稜線のアップダウンから開放してくれました。まさに理想的な展開でした。




  仁田岳でしょうか・・・。タオルで○×も隠している事ですし、シマヤンとツーショットしてみます。


  この後どんどんガスが濃くなっていきます。”ここ1週間は天候は安定していると言っていたのに・・・”と、神の声が聞こえてきます。僕には十分安定していると思えるのですが。来し方、茶臼岳(右)と上河内岳(左)を振り返ります。


  易老岳付近から光岳への稜線は、御二人のホームグラウンドの大峰に雰囲気が良く似ています。彼らもしきりにそれを口にします。いつもの通り、ほとんど休みナシでひたすら歩き続けます。


  この時期に新緑ですね。これはトウヒでしょうか?


  三吉平で大休止です。僕は、通常大休止は取らず、専ら行動食に頼りますが、彼ら山歩隊のパターンは違います。大休止を取り、食事をしっかり楽しみます。僕も彼らのパターンに従います。大休止を取る場所には要注意です。おいしい食事と楽しいコミュニケーションの後で、ショウタンが見てはならぬものを見てしまいました。もうちょっと、見えないところに始末しておいて欲しいですね、大キジ!




  15年以上前に、秩父の金峰山で知り合った水沼女史が言っていた、”私、南アルプスならイザルガ岳が好き”の言葉が、胸に残っていました。確かに雰囲気の良い山でしたが、周囲はガスで何も見えず。ただ、頂上の西側でMOVAなら入ります。家への連絡に、小屋から再度登頂しました。そして、写真で見た”センジヶ原”です。すでに花の大半は終わっていましたが、このうら寂しい風景もまた味があります。


  そして、念願の光岳です。見通しはありません。”なんのこっちゃ”頂上です。ここは、光岳への道程および、この先にある光岩が”売り”だと思います。ともあれ、無事到着で、喜びもひとしお、名標の頭を愛情を込めてさする僕が居ます。何故か、他人には思えなくて・・・(笑)。この後、光岩へ辿ります。結構な下りで、帰りに再度登る事を考えると、少しうんざり・・。でも、オジサン二人は違います。”マッチャン岩や~!!””後光が射しとる!”と、おおはしゃぎです。彼らに愛されているマッチャンを、少し妬ましく思います・・・・(笑)。




  ”蝶々は写真撮るの難しいで。あいつら、近づいたら逃げよる”。はい、チャンスをうかがっておりました。タカネヒカゲでしょうか。
 ハクサンフウロも残っていました。 8月22日

  昨夜は大きな雷が2~3回ドカンと・・。稜線上での雷は怖いですが、小屋の中だと平気です。連日の疲れも重なり、結構眠れたように思います。いつも鼾のすごいシマヤンよりも、昨夜はショウタンの鼾が凄まじかったです。相当お疲れなのでしょう。御二人とも還暦前とは信じられません・・・。熊が徘徊しているようで、小屋番さんに注意を促されました。夜にトイレに出てみると、何やら大きな動物の動く音が・・。”ぎゃ!熊??”良く見ると鹿でした。




  今日は易老岳から下ります。当初のコースでは、ここを登るはずでした。御二人、しきりにうなずきあいます、”このコースはエライしょ。登らんで良かったワイ。”僕も少しずつ和歌山弁が理解できるようになりました(笑)。
 


  名残惜しや・・・、今回の山行も、もう少しでフィナーレです。山の霊に別れ難い気持を伝える僕がいます。そんな事はとうに超越した熟年オジサマは、さっさと今日も高速で下ります。しかしながらこの道は、薊畑への登りよりもかなり足場が悪く、堪えるであろう感じがしました。年配の団体さんが幾組みも登っていきます。

  今日も光小屋、大変ダア!




  フィナーレ、易老橋です。苦しく、楽しかった山もこれで終わりです。山歩隊の皆様、南アルプス、気に入ってくださったでしょうか?今回は僕の我儘にお付き合いくださり、有難うございました。御陰様でこの後入ったすばらしい”かぐらの湯”でも、腰痛も出ることも無く、御馳走しこたまおごってくださり、楽しいばかりの思い出となりました。これから先も、一つずつ良い思い出を増やしていけたら良いな。